配偶者ビザとは、日本人と結婚した外国人のかたが日本で暮らすために必要な法的な資格(=在留資格)のことをいいます。
結婚ビザとも呼ばれていますが、正式名称を在留資格「日本人の配偶者等」といいます。
査証(ビザ)は日本大使館や領事館など在外公館が発給するもので、在留資格は日本の出入国在留管理局が付与するものなので本来、
在留資格とビザは別物なのですが、その違いはおいおい理解していただくとして、この記事では分かりやすく「配偶者ビザ」という言葉で解説していきます。
国際結婚をして、これから日本で結婚生活を送ろうと考えていらっしゃるかたは、「配偶者ビザ」という言葉を耳にされたことがあるはずです。
配偶者ビザは、審査を通過して無事に取得できれば、その後ご夫婦で日本で結婚生活を送ることができるようになります。
一方で、不許可になる人も多くいらっしゃることから、「取得するのは難しそうだ」という先入観をもったり、ハードルの高さを感じてためらう方が多いのも事実です。
そこで今回は、配偶者ビザの知識について「配偶者ビザ・ファネル」を用いながら、その申請方法からリスクなどについて、視覚的に詳しく解説していきます。
まずは配偶者ビザの申請方法(取得方法)からみてみましょう。
1 2種類ある、配偶者ビザの申請方法
1.1 海外から呼び寄せる
1.2 日本で切り換える
2 配偶者ビザファネルで視覚的に理解する、配偶者ビザ申請のポイント
2.1 配偶者ビザ・ファネル1:両国での結婚が法的に成立している
2.2 配偶者ビザ・ファネル2:婚姻の真実性が立証されている
2.3 配偶者ビザ・ファネル3:収入が継続的で安定的であることが立証されている
2.5 配偶者ビザ・ファネル5:許可
3 配偶者ビザ申請にはリスクが多く、もらえないと海外で暮らすことに
4 配偶者ビザ申請の成功を左右する行政書士事務所選び
5 十分な知識を身につけてから、挑戦しよう
配偶者ビザの申請方法は2通りあります。1つ目の方法は、お相手の外国人が海外にいらっしゃるために、配偶者ビザを取得してから来日される方法です。
もうひとつの方法は、お相手の外国人が申請時に日本にいらっしゃるために、現在のビザを日本で配偶者ビザに切り替える方法です。
通常は、海外にいる方を呼び寄せるほうが、すでに日本にいらっしゃる方が配偶者ビザを取得するよりも大変と思われがちですが、実際は必ずしもそうではなく逆のケースもあります。
なぜなら、すでに日本に滞在されている方は、これまでの日本での在留状況が審査対象になり、「在留不良」と判断されれば、配偶者ビザへの切り替えが拒否されてしまうからです。
つまり、すでに日本にいるかたのほうが、海外にいるかたよりも審査項目が多いので、その分、不許可になるきっかけも多くなります。
海外から結婚されたお相手の外国人を呼び寄せる場合には、まず、日本人である夫または妻が、日本で出入国在留管理局(入管)に対して、在留資格認定証明書交付申請という申請をします。
そして許可されると入管から在留資格認定証明書という書面をもらえますので、それを海外のお相手に送っていただき、それを用いてお相手が母国で査証申請をするという流れになります。
留学生やワーキングホリデーまたは就労ビザなどですでに日本で生活している外国人とご結婚をされた場合には、日本で現在の在留資格を配偶者ビザに切り替えることとなります。
すでに日本に入国してしまっている人だから、新たに入国する人よりもカンタンに配偶者ビザをもらえるように思われがちですが、現実はその逆です。
なぜならすでに日本で生活した実績があるので、その過去の滞在歴が日本の法令に合致していたかを審査されるためです。
例えば、留学生であれば、週28時間のアルバイトの制限時間を守っていたかがチェックされ、守っていなければ入管法違反ですから、在留不良者として配偶者ビザがもらえないだけでなく、留学ビザの更新ができないこともよくあります。
まず配偶者ビザを取得するための最低限の条件として、日本とお相手の国で、法的に婚姻が成立している必要があります。日本だけで結婚が成立し、お相手の国では成立していない状況を「跛行婚(はこうこん)」と呼びます。
日本で先に手続きをすると、お相手の国で“自動的に”結婚が成立する国(アメリカ、中国、香港など)もありますが、ほとんどの国はそのような制度ではありませんので、お相手の国でも結婚手続きをしなければなりません。
フィリピン、ベトナム、韓国、台湾などの国の場合は、日本で先に結婚をしても、お相手の国で自動的に結婚が成立する仕組みではありませんので、きちんとお相手の国で結婚の報告的届出をして、
お相手の国で結婚が登録されたことを証明する結婚証明書を取得しましょう。この結婚証明書は、配偶者ビザ申請の必要書類の一つとなっています。
また“両国”で結婚が成立している必要がありますので、外国で日本人と外国人とのあいだに成立した同性婚は、残念ながら日本では法的な結婚として認められていないので、配偶者ビザは申請することができません。
両国で法律上の結婚が成立していることが確認されたら、次のフィルターは、婚姻の真実性が立証されているか、です。
婚姻の真実性とは、結婚がビザ目的の偽装結婚でないことを意味しますが、ポイントはそれがきちんと「立証」されている必要があるということです。立証するためには、きちんとした「証拠」をそろえなければなりません。
偽装結婚は非常に手が込んでいて、何度もデートを繰り返して写真を用意するくらいのことは当たり前のように行われています。
この要件の派生形として、ご夫婦の「同居」も配偶者ビザ発給の条件となります。今時、単身赴任などで同居していないご夫婦は多く、同居していないから偽装婚ということにはなりませんが、日本の配偶者ビザが発給されるためには、ご夫婦が同居して夫婦生活を送っていることが前提となります。住民票上の住所が同じというだけでは足りず、実際にひとつ屋根の下で暮らしている必要があります。
両国での法的な婚姻が成立し、自分たちの結婚が真実のものであることを立証できたら、次は、収入が安定的かつ継続的に確保できていることを立証する必要があります。
収入が安定的かつ継続的として認められるための分かりやすい指標が、銀行から住宅ローンを借りられる状況にあるかです。
安定的かつ継続的な収入がないと銀行から住宅ローンは借りられませんので、住宅ローンが借りられるような状況にあれば、とりあえず安心ができるでしょう。
住宅ローンと完全に審査基準が一致しているわけではありませんが、①年収、②雇用形態、③勤続年数、④家族構成、⑤雇用先の規模、⑥保有資産などは、配偶者ビザでもチェックされます。
①の年収は、多い方が有利になります。②の雇用形態は、正社員の方が有利になります。③の勤続年数が長い方が有利になります。④の家族構成は、扶養家族が多いとそれだけ多くの所得が必要となります。
⑤の雇用先の規模は、設立まもない小さな企業よりは、上場企業のほうが有利になります。⑥の保有資産は、多い方が有利になります。
両国で結婚が法的に成立し、婚姻が真実のもので、収入も継続的かつ安定的なものであると立証された場合でも、これまでの日本の在留状況が悪いと配偶者ビザは発給されません。
たとえば、留学生なのに学校に通っていないとか、就労ビザなのに仕事をしていないとかいう場合は、「在留不良」であるので、次の在留資格はもらえない可能性が高くなります。
留学ビザなのに留学生としての活動をしていない、就労ビザなのに就労していない人は、配偶者ビザをあげても「配偶者としての活動」をしないであろうとみこまれるからです。
このように、両国で法的な婚姻が成立しており、婚姻の真実性の立証に成功し、収入の継続性と安定性の立証に成功し、在留も良好である場合には、配偶者ビザが許可される可能性があります。
ただしこれらの条件をすべてクリアしていたとしても、たとえば、外国で殺人などの重い犯罪をされた方などは、日本の配偶者ビザは取得することができません。
いくつものハードルをすべて乗り越えると、晴れて日本の配偶者ビザを取得することができます。
このように配偶者ビザ申請にはリスクが多く、実際に不許可になる人も多いのですが、日本の配偶者ビザをもらえないとどうなるのでしょうか?
日本の配偶者ビザをもらえなくても、結婚は成立していますので、お相手の国で生活することは可能です。イスラム圏の国などには、自国民と結婚した外国人には自動的に国籍を付与する国もありますから、
そういう場合は、お相手の国で結婚生活を送ることができるでしょう(ただし国籍を与えられてしまうと日本の国籍を失いかねないので、別の問題が生じる可能性があります。)。
配偶者ビザを申請するさいに、多くの方が利用しているのが行政書士事務所です。配偶者ビザの申請は、ぶっつけ本番でやるにはあまりにもリスクが大きいため、国際経験の豊かな人ほどプロに頼む傾向にあります。
向う見ずに自力でやってしまうのは、どちらかというと国際経験に乏しく、ビザの本当の怖さをご存じでないかたが多い印象です。
在留資格は入国管理局という行政機関が審査するので、「行政」書士が申請を担当しています。
行政書士選びが、配偶者ビザ申請の成功を左右するといっても過言ではないので、その選択は慎重に行う必要があります。
とても大事なパートナー選びですから、はじめて配偶者ビザ申請をするあなたの気持ちに寄り添って、さまざまなアドバイスをしてくれる行政書士を選ぶようにしたいもの。
では、どのような事務所が良い行政書士事務所といえるのでしょうか?
その判断基準のひとつは、事前にリスクをきちんと説明してくれるか否かです。配偶者ビザには、いろいろなリスクが潜んでいますから、それらを事前にきちんと説明してくれる人の方が信頼ができます。
リスクを説明しないどころか、私に依頼すれば「必ず(100%)許可されます」と言ったり、「許可を保証します」といったりする業者には気を付けましょう。
行政書士には審査権限はないのですから、できないことをできるという業者には、要注意です。
日本は世界的に見ても結婚が容易に成立する国です。外国には結婚に国の許可が必要だったり、年齢差が20歳以上あると結婚できなかったり、成人しているのに両親の同意が必要であったり、
結婚が成立しにくい国が沢山あります。
日本が結婚の成立しやすい国であるために、配偶者ビザも取得が容易とイメージされる方がとても多いのですが、日本は先進国なので、配偶者ビザは取得しにくいです。
配偶者ビザ申請は、一見すると、とてもカンタンなようにみえます。しかし配偶者ビザに限ったことではありませんが、許認可には許可・不許可が必ずあることなので、リスクがゼロということはありえません。
他の行政庁への許認可申請と同様に、知識や経験が足りないまま挑むと、失敗する可能性が高くなります。
失敗すると致命傷になりかねない配偶者ビザだからこそ、リスクを最小限に抑えるために、プロをうまく活用しましょう。
東京・千葉・埼玉・神奈川のかたは、東京のアルファサポート行政書士事務所が、この記事の趣旨をふまえて申請してくれるのでイチオシです。
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
特定技能ビザ申請