うちの会社でも、特定技能ビザで外国人を雇用したいと考えています。でも、よく分からなくって。
それじゃあ、僕が、2019年4月から新しく創設された特定技能ビザ、在留資格「特定技能」について分かりやすく教えるね!
【解説】
特定技能ビザとは、日本の産業界における深刻な人手不足を解消するため、2019年の4月から新たに導入された在留資格で、正式名称を在留資格「特定技能」という就労ビザの一種です。
この新しい在留資格を創設する第一義的な目的は日本の「人手不足の解消」にあります。
各省庁が選んだ人手不足と認められる業界に外国人の受け入れが解禁される予定で、その仕事の内容は高度・専門的なものである必要はありません。人手不足であることを、政府が認めてくれさえすればよいのです。
必ずしもすべてが単純労働というわけではありませんが、これまで「単純労働」と認識されてきた仕事に外国人が就くことを可能にする制度であるため、国会審議ではその是非について侃々諤々の議論がなされていました。
それもそのはず、日本は有史以来、外国人に単純労働を解禁したことはなく、まさに歴史的な転機にあるからです。
特定技能ビザは1号と2号とに分かれており、はじめは皆さん、1号から始めます。これまで技能実習生だった人を除いて、いきなり2号から始めることはできません。
そして業種によって、1号から2号に進むことができる業種(後述の5業種)と、進むことができない業種(後述の9業種)とがあります。
特定活動ビザ1号をお持ちの外国人は、通算で「5年」しか日本に滞在することができませんので、後述する日本の永住の要件を満たすことはなく、他の在留資格への変更が認められるなどしない限り、これらの人々が永住権を取得することはありません。
この点をとらえて政府は、「今回の特定技能ビザの導入は、移民政策ではない」と主張しています。
一方で、特定技能ビザ2号は、他の就労ビザと同じく、要件を満たしている限り更新をすることが可能で、かつ、更新の回数には制限が設けられていません。
したがって永住資格の要件を満たす可能性があり、それらの人たちは日本の永住者となって、将来も長きにわたり、日本の産業を支えていくこととなります。
特定技能の制度を利用して日本で働きたい外国人と、どのようにして出会えばよいのでしょうか?
僕の周りでは、日本に留学している日本語能力の高い人材を、彼らの卒業と同時に採用する傾向が高いようだよ。
日本には大学への留学生だけでなく、専門学校への留学生も多数いて、これらの人は従来の就労ビザは取得することができないことが多いから、特定技能での就職を真剣に考えているんだ。
企業と在日外国人とをつなぐ専門のマッチングサイトも登場しているから利用を検討してみたらどう?
そもそも、なぜこの時期に、外国人労働者の受け入れを拡大するのですか?
少子高齢化で労働力人口がどんどん減って、産業によっては存続が危ぶまれるほどの水準になっているからなんだ。
【解説】
総務省「労働力調査年報」よれば、2016年には6648万人だった日本の労働力人口は、少子高齢化の加速により、2025年には6149万人まで落ち込む見込みです。わずか10年間で、499万人もの労働力が消失することとなります。
一方で、厚生労働省の発表によれば、2018年9月の有効求人倍率は1.64倍となっています。有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合ですから、1人の求職者に対して1.6件の就職先があることを意味します。
もちろん、求職者の側にも企業の側にも、就職先や採用する人を選ぶ権利がありますから失業率がゼロというわけにはいきませんが、理論上は、働きたい人は全員仕事に就ける状況にあるのです。
これが何を意味しているのかというと、今後10年で消失する労働力の減少は、もう日本人でカバーすることはできないという現実です。
そこでその労働力の減少に歯止めをかけるため特定技能ビザを創設し、外国人労働者のさらなる受け入れに踏み切ったわけです。
特定技能ビザの導入で、政府が2019年以降の5年間で受け入れを予定している外国人労働者の数は26万人から34万人とされています。
仮に34万人の外国人労働者を受け入れたとしても、100万人単位で減少していく日本全体の労働量不足を解消するにはほど遠く、「焼け石に水」という評価があるのも事実です。
たしかに深刻な人手不足なんですよね。でも、どんどん外国人労働者がやってくると、その産業で働いている日本人の雇用を脅かさないのでしょうか?
もちろんその恐れはあるよね。だから、新しい入管法では、人手不足が解消されたと官庁が判断したときには、特定技能ビザの発給がストップすることになっているよ。
【解説】
新しい入管法には、次の趣旨の条文が設けられる予定です。条文中の「在留資格認定証明書」は記事の後半で説明しますが、特定技能ビザのことであると考えていただいて大丈夫です。
条文から明らかなように、産業を所管する官庁の大臣が、人手不足が解消されたと判断するときには、一時的に特定技能ビザの発行はストップされることになっており、一度受け入れをストップしたものの、また労働力不足になったときには、受け入れを再開することとされています。
したがって、この条文がきちんと機能することが前提ですが、労働力不足が解消された後も、雪崩のように外国人労働者がやってくるという事態は、制度上は防ぐことができることになっています。
(特定技能ビザの交付の停止の要求)
1 特定産業分野を所管する関係行政機関の長は、当該特定産業分野に係る分野別運用方針に基づき、当該特定産業分野において必要とされる人材が確保されたと認めるときは、法務大臣に対し、一時的に在留資格認定証明書の交付の停止の措置をとることを求めるものとする。
(特定技能ビザの交付の停止)
2 法務大臣は、前項の規定による求めがあつたときは、分野別運用方針に基づき、一時的に在留資格認定証明書の交付の停止の措置をとるものとする。
(特定技能ビザの交付の再開)
3 前二項の規定は、一時的に在留資格認定証明書の交付の停止の措置がとられた場合において、在留資格認定証明書の交付の再開の措置をとるときについて準用する。この場合において、「確保された」とあるのは「不足する」と読み替えるものとする。
特定技能ビザ1号が許可される外国人労働者とはどんな人ですか?
まず現場で「即戦力」として活躍できるだけの知識か経験が求められるよ。それから最低限の日本語能力も必要だ。
それから、外国人の国籍によっては、許可されなかったり、審査が厳しくなったりするよ。
【解説】
平成30年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」によれば、特定技能ビザが許可されるためには、
①技能水準については、受入れ業種で適切に働くために必要な知識及び技能が必要であるとし、業所管省庁が定める試験等によって確認するものとしています。
②日本語能力水準については、日本語能力試験等により、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することが確認されることを基本としつつ、
受入れ業種ごとに業務上必要な日本語能力水準を考慮して定めることとされています。
多くの業種で日本語能力試験のN4(基本的な日本語が理解できるレベル)が想定されているものの、建設と農業分野においては他の分野よりも日本語能力が低くて良いなどとされる可能性があります。確かに、日本人との濃密なコミュニケーションが不可欠な介護分野と、農業・建設分野とでは、求められる日本語能力に差を設けてもそれほど不合理ではないでしょう。
農業分野ではメッセージボードや写真を指差すことによるコミュニケーションでも可とするなどという一部報道もありますが、そこまで認められるかは予断を許しません。
ただし、技能実習(3年)を修了した外国人が特定技能ビザへの変更を希望する場合においては、知識・技能試験や日本語試験は免除され、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているもの判断されるものとしています。
また、法務省は、下記の国の国籍をもっている外国人に対しては、特定技能ビザを許可しないか、又は厳格に審査する方針を明らかにしています。
A 退去強制処分を受けた自国民を引き取らない方針を打ち出している国からは受け入れない(特定技能ビザを許可しない)
B 乱用的な難民申請や不法滞在者が多い国の出身者の申請は、厳格に審査する
Aについては、たとえばイランなどの国は、自国の憲法に居住移転の自由が定められていることを理由に、たとえ自国民に退去強制処分が出たとしても、
その身柄の引き受けを拒否したり、パスポートの発給を拒否したりしている現状があります。
このような国からの労働者受け入れをすると、犯罪を犯して日本にはいられなくなった場合においてさえ、外国人本人が希望しない限り送還することができないので、極めて不都合です。したがって法務省は、このような国の国籍者に対しては、そもそも特定技能ビザを許可しない方針としています。
Bについては、不法滞在者が多い国の場合、通算で5年しか認められていない日本滞在が終わった後も、不法滞在で日本に居残る可能性が統計上高いので、
特定技能ビザを与える最初の段階で、厳格に審査するものとしています。
すべての業界で、特定技能ビザの外国人を受け入れることができるわけではないのですよね?
そうそう。人手不足が深刻なレベルにあると政府が認定した場合に、受け入れが可能になるよ。
【解説】
入管法という法律のレベルでは、どの産業において特定技能ビザにより外国人を受け入れることにするのかは規定されません。
この判断は、国会ではなく、行政府が行ない、具体的には省令等により定めることとなります。
平成30年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」によれば、在留資格「特定技能」による外国人材の受入れは、生産性向上や国内人材の確保のための取組(女性・高齢者の就業促進、人手不足を踏まえた処遇の改善等)を行ってもなお、当該業種の存続・発展のために外国人材の受入れが必要と認められる業種において行うものとされています。
そして現時点では、特定技能ビザ1号が解禁されるのが14業種(後述)、特定技能ビザ2号にまで道が開かれるのは5業種(後述)とされています。
それはつまり、5業種では外国人を定年まで雇用できる可能性があるのに対して、残りの9業種においては、通算して5年までしか同じ外国人を採用することができないということを意味します。ただし介護については、2号業種には含まれていないものの、在留資格「介護」が別に設けられていますので、そちらで永住を目指す可能性があります。
特定技能ビザ1号が解禁される14業種とは、①建設業、②造船・舶用工業、③自動車整備業、④航空業、⑤宿泊業、⑥介護、⑦ビルクリーニング、⑧農業、⑨漁業、⑩飲食料品製造業、⑪外食業、⑫素形材産業、⑬産業機械製造業、⑭電気電子情報関連産業です。
また特定技能ビザ2号が解禁される5業種とは、①建設業、②造船・舶用工業、③自動車整備業、④航空業、⑤宿泊業です。
特定技能ビザは2種類あるんですよね?
そうそう。海外から招聘する場合には、特定技能ビザ1号から始めることになるね。
【解説】
特定技能ビザ1号で行うことができる活動
入管法は、特定技能ビザ1号ですることができる活動を、「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野(人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものをいう。)であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動」と定めています。
特定技能ビザ1号に求められる技能水準
なんといっても注目すべきなのは、平成30年6月に閣議決定された「骨太の方針2018」において、「受入れ業種で適切に働くために必要な知識及び技能」とされていた技能水準が、法文では「相当程度の知識又は経験」とされたことです。条文の「知識・経験」は「又は」でつながれていますから、知識さえあれば、経験は不要ということです。
ペーパーテストに合格し「知識」を証明すれば、その分野における「職歴」がなくても特定技能1号が許可される可能性を示しています。
特定技能ビザ1号で認められること、認められないこと
特定技能ビザ1号では、「通算で」5年まで日本の滞在が認められます。日本への「定住」が想定されておらず、5年以内に帰国することが決定していることから、家族の帯同(奥さんや子供を日本に連れてくること)は認められません。
【解説】
特定技能ビザ2号で行うことができる活動
入管法は、特定技能ビザ2号ですることができる活動を、「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動」と定めています。
特定技能ビザ2号で認められること、認められないこと
大きな特徴は、更新が回数の制限なく認められ得る点です。したがって特定技能ビザ2号の保有者は、「10年以上引き続いて日本に滞在すること」という永住資格の要件の1つをクリアできる可能性があります。定住の可能性がある類型のため、家族の帯同が可能です。ただし、ここでいう家族とは妻子のことを言います。親や兄弟姉妹はここでいう家族には含まれず帯同できません。親や兄弟姉妹を帯同できないのは特定技能ビザ2号に限らず、他の大半の就労ビザに共通しています。
いよいよ私の会社で特定技能ビザを申請しようと思いますが、受け入れる会社にはどのような条件が設けられていますか?
受入会社の事を入管法では「特定技能所属機関」と呼ぶよ。基準をしっかり確認してね。
【解説】
特定技能ビザで来日する外国人を雇用する日本の会社のことを、入管法では「特定技能所属機関」と呼びます。
受入会社(特定技能所属機関)として認められるためには、以下の3つの基準を満たす必要があります。
A 外国人と締結する契約(特定技能雇用契約)は、報酬額が日本人と同等以上であることなどを確保するため、所用の基準を満たすことが必要です。
B 労働法関係法令・社会保険関係法令の遵守はもちろんのこと、欠格事由に該当しないこと
C 外国人支援計画の実施
A 特定技能雇用契約について
特定技能活動を行なおうとする外国人が、日本の公私の機関と締結する雇用契約を、入管法では「特定技能雇用契約」と呼びます。
この雇用契約には、以下の事項が記載されていなければなりません。
1 外国人が行う特定技能活動の内容及びこれに対する報酬その他の雇用関係に関する事項
2 雇用契約の期間が満了した外国人の出国を確保するための措置その他当該外国人の適正な在留に資するために必要な事項
3 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならないことについての事項
B 受入会社の適格性について
受入会社に求められる適格性は、①特定技能雇用契約を適正に履行しているかどうか、②特定技能外国人支援計画を適正に実施しているか否か、③特定技能雇用契約の締結の日前、5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしていないか、等により判断されます。
C 外国人支援計画
受入会社は、外国人支援計画を策定し実施する必要がありますが、この支援計画とは、外国人が特定技能活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画のことを言います。
具体的には、以下のような支援を盛り込みます。
①入国前の生活ガイダンスの提供
②外国人の住宅の確保
③在留中の生活オリエンテーションの実施
④生活のための日本語習得の支援
⑤外国人からの相談・苦情への対応
⑥各種行政手続についての情報提供
⑦非自発的離職時の転職支援
①~⑥については入管法には規定がなく詳細は法務省令に委ねられますが、⑦については法律に規定があります。
外国人が、その責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合において、他の会社との特定技能雇用契約に基づいて特定技能活動を行うことができるようにするための支援を含ませるものとされているのです。
⑦についてのみ法律で規定している意味は、行き場を失った労働者が不法就労など適切でない就労につくことを防止する点にあると言えます。
例えば、外国人の働いていた会社が業務縮小を余儀なくされ人員整理のため雇用契約が解除されたとしましょう。この場合、外国人に責任はありませんから、そのような場合には、他社に転職することができるよう支援をしなければなりません。
【解説】
1 特定技能所属機関の届出義務
特定技能雇用契約の相手方である日本企業は、下記に該当するときは、出入国在留管理庁長官に対して、その旨及び法務省令で定める事項を届出る義務があります。
A 特定技能雇用契約の変更(軽微な変更を除く。)をしたとき、若しくは特定技能雇用契約が終了したとき、又は新たな特定技能雇用契約の締結をしたとき。
B 一号特定技能外国人支援計画の変更(軽微な変更を除く。)をしたとき。
C 登録支援機関とのあいだにおいて外国人支援計画の全部の委託をする旨の契約の締結若しくは変更(軽微な変更を除く。)をしたとき、又は当該契約が終了したとき。
D 受け入れている特定技能外国人の氏名及びその活動の内容その他の法務省令で定める事項
E 適合一号特定技能外国人支援計画を作成した場合には、その実施の状況(登録支援機関に外国人支援計画の全部の実施を委託したときを除く。)
F 特定技能外国人の在留管理に必要なものとして法務省令で定める事項
2 特定技能所属機関に対する指導及び助言
出入国在留管理庁長官は、次に掲げる事項を確保するために必要があると認めるときは、特定技能所属機関に対し、必要な指導及び助言を行うことができる。
一 特定技能雇用契約が規定に適合すること。
二 適合特定技能雇用契約の適正な履行
三 一号特定技能外国人支援計画が規定に適合すること。
四 適合一号特定技能外国人支援計画の適正な実施
五 特定技能所属機関による特定技能外国人の受入れが出入国又は労働に関する法令に適合すること。
3 報告徴収等
出入国在留管理庁長官は、必要な限度において、特定技能所属機関若しくは特定技能所属機関の役員若しくは職員に対して、報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、若しくは特定技能所属機関若しくは役職員に対し出頭を求め、又は入国審査官若しくは入国警備官に関係人に対して質問させ、若しくは特定技能所属機関に係る事業所その他特定技能外国人の受入れに関係のある場所に立ち入り、その設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができます。
ただしこれらの権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないとされています。
質問又は立入検査を行う場合においては、入国審査官又は入国警備官は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを提示しなければなりません。
4 改善命令等
出入国在留管理庁長官は、①特定技能雇用契約が規定に適合すること、②適合特定技能雇用契約の適正な履行、③一号特定技能外国人支援計画が規定に適合すること、④適合一号特定技能外国人支援計画の適正な実施、⑤特定技能所属機関による特定技能外国人の受入れが出入国又は労働に関する法令に適合すること、が確保されていないと認めるときは、特定技能所属機関に対し、期限を定めて、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができ、命令をした場合には、その旨を公示しなければなりません。
5 特定技能所属機関による一号特定技能外国人支援等
特定技能所属機関は、適合一号特定技能外国人支援計画に基づき、一号特定技能外国人支援を行わなければならないが、契約により他の者に一号特定技能外国人支援の全部又は一部の実施を委託することができる。
ところで、登録支援機関ってなんでしょうか? うちの会社が何かを登録するときに、その登録をサポートしてくれるのですか?
ちがうちがう。「登録を支援」するんじゃなくて、政府に「登録された支援機関」という意味なんだ。
中小企業が様々なサポートを外国人に提供するのは大変だよね? だから外国人支援の部分を一括して丸投げできる機関を作ろうってわけ。
【解説】
特定技能ビザで外国人を受け入れる際、受け入れ企業は様々な外国人支援活動をする必要があります。支援内容は上でみたように、入国前の生活ガイダンスの提供から、住宅の確保、日本語取得の支援や行政手続きの情報提供まで多岐に渡っています。
そもそも、特定技能ビザを受け入れる業種は、究極の人手不足に陥っている業界なのですから、外国人支援を各企業に任せたら、後回しにされるか、全く行われないか、とにかく外国人支援計画が適正に実施されないことは目に見えています。そこで、外国人の労働力は必要としているけれども、外国人支援にマンパワーを避くことができない企業には、登録支援機関にこの支援の部分を全部、まるごと委託するという選択肢があります。
受け入れ企業は自社内でこれらの支援活動をして登録支援機関を利用しなくても構いません。
もし登録支援機関を利用して、特定技能外国人支援計画の「全部の」実施を委託した場合には、受け入れ企業は、「外国人支援計画」の適正な実施をしているものとみなされます。
もちろん、一部だけを委託することもできますが、この場合は、法律で外国人支援計画の適正な実施をしているものと「みなされる」ことはなく、チェックの対象となります。
登録支援機関について判明している概要は下記の通りです。
1 登録支援機関の登録
契約により委託を受けて適合一号特定技能外国人支援計画の全部の実施の業務(支援業務)を行う者は、出入国在留管理庁長官の登録を受けることができ、この登録は、五年ごとに更新が必要となります。この登録や更新の際には手数料を支払います。
2 登録支援機関の登録の申請
登録支援機関の登録を受けようとする者は、申請書を出入国在留管理庁長官に対して提出することになります。
申請書には、①氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名、②支援業務を行う事務所の所在地、③支援業務の内容及びその実施方法その他支援業務に関し法務省令で定める事項を記載します。
また申請書には、登録拒否事由のいずれにも該当しないことを誓約する書面その他の法務省令で定める書類を添付します。
3 登録支援機関の登録の実施
出入国在留管理庁長官は、登録の申請があつたときは、登録を拒否する場合を除き、次に掲げる事項を登録支援機関登録簿に登録することとなります。
①氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名、②支援業務を行う事務所の所在地、③支援業務の内容及びその実施方法その他支援業務に関し法務省令で定める事項、④登録年月日及び登録番号
出入国在留管理庁長官は、登録支援機関の登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知します。
4 登録支援機関の登録の拒否
出入国在留管理庁長官は、登録を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならないとされています。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者
二 出入国管理及び難民認定法若しくは外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号。以下「技能実習法」という。)の規定その他出入国若しくは労働に関する法律の規定(第四号に規定する規定を除く。)であつて政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者
三 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第五十条(第二号に係る部分に限る。)及び第五十二条の規定を除く。)により、又は刑法第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者
四 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第二百八条、第二百十三条の二若しくは第二百十四条第一項、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第百五十六条、第百五十九条若しくは第百六十条第一項、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第五十一条前段若しくは第五十四条第一項(同法第五十一条前段の規定に係る部分に限る。)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第百二条、第百三条の二若しくは第百四条第一項(同法第百二条又は第百三条の二の規定に係る部分に限る。)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第四十六条前段若しくは第四十八条第一項(同法第四十六条前段の規定に係る部分に限る。)又は雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第八十三条若しくは第八十六条(同法第八十三条の規定に係る部分に限る。)の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者
五 心身の故障により支援業務を適正に行うことができない者として法務省令で定めるもの
六 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
七 登録を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者
八 登録を取り消された者が法人である場合において、当該取消しの処分を受ける原因となつた事項が発生した当時現に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。第十二号において同じ。)であつた者で、当該取消しの日から起算して五年を経過しないもの
九 登録の申請の日前五年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
十 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(第十三号において「暴力団員等」という。)
十一 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であつて、その法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該当するもの
十二 法人であつて、その役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの
十三 暴力団員等がその事業活動を支配する者
十四 支援業務を的確に遂行するための必要な体制が整備されていない者として法務省令で定めるもの
出入国在留管理庁長官は、登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を申請者に通知することとされています。
5 登録事項の変更の届出等
登録支援機関は、登録事項に変更があつたときは、その旨を出入国在留管理庁長官に届け出なければなりません。
出入国在留管理庁長官は、変更の届出を受理したときは、当該事項を登録支援機関登録簿に登録し、遅滞なく、その旨を申請者に通知します。
6 登録支援機関登録簿の閲覧
出入国在留管理庁長官は、登録支援機関登録簿を一般の閲覧に供しなければなりません。
7 登録支援機関の支援業務の休廃止の届出
登録支援機関は、支援業務を休止し、又は廃止したときは、その旨を出入国在留管理庁長官に届け出なければなりません。
支援業務を廃止した旨の届出があつたときは、登録は、その効力を失います。
8 登録支援機関の支援業務の実施等
登録支援機関は、委託に係る適合一号特定技能外国人支援計画に基づき、支援業務を行います。そして、支援業務の実施状況その他法務省令で定める事項を出入国在留管理庁長官に届け出ます。
9 登録支援機関に対する指導及び助言
出入国在留管理庁長官は、登録支援機関の支援業務の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、登録支援機関に対し、必要な指導及び助言を行うことができます。
10 登録支援機関の登録の取消し
出入国在留管理庁長官は、登録支援機関が①不正の手段により登録を受けたとき、②報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたときなどは、
その登録を取り消すことができます。
11 登録支援機関の登録の抹消
出入国在留管理庁長官は、登録がその効力を失つたとき、又は登録を取り消したときは、当該登録を抹消します。
12 登録支援機関の報告又は資料の提出
出入国在留管理庁長官は、支援業務の適正な運営を確保するために必要な限度において、登録支援機関に対し、その業務の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができます。
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
特定技能ビザ申請