【もくじ】
1.配偶者ビザ申請書類を作成するときのポイント
2.配偶者ビザの申請書は「第一印象」が重要
3.配偶者ビザの申請理由書はなるべく短く、すぐに読めるように
4. 配偶者ビザの申請理由書はベストエビデンスを挙げながら
5.配偶者ビザの弱点をカバーするには証拠説明書を活用しよう
6.配偶者ビザの必要書類を確認しよう
7.配偶者ビザの依頼は、だれでも良いの?
“(岡口裁判官)ファーストインプレッションなのですが、これがとても重要なのは、裁判官がこのファーストインプレッションにしばらく拘束されるからです。だから、訴状はなるべく短く、すぐに読めるようにして、ベストエビデンスを挙げながら、「私が言っていることは間違いないのです。」と裁判官に刷り込む。それをまずバンとやるのがすごく大事で。”
『裁判官!当職そこが知りたかったのです。』19ページ
みなさんは、配偶者ビザの申請書類を作成したり、必要書類を集めたりするにあたって、何から手をつけたらよいかわからず途方にくれていませんか?
そんなとき、日本の入国管理局の職員さんに聞いても、丁寧に教えてくれることはありません。彼らは受付(受理)に必要な書類のリストはくれますが、許可を勝ち取れるように、状況に応じて書類をカスタマイズしてくれることはないでしょうし、あっても許可されるために必要なポイントは教えてくれません。彼らの仕事ではないからです。
それでは、私たちが適切に配偶者ビザ申請書類を作成し、集めていくにあたって、なにか道しるべになるようなものはないのでしょうか?
実はあるのです! それが冒頭にかかげた文章に代表される、裁判官が自らレクチャーする、法律書類の作成のポイントです。
訴状は裁判官を説得する法律文書であり、配偶者ビザの申請書は入管職員を説得し許可を勝ち取るための法律文書です。同じ法的主張をするための文書なので、共通点がたくさんあります。
冒頭引用文の発言者は、東京高等裁判所の岡口裁判官というかたですが、この裁判官は要件事実論という法律分野の第一人者で、法曹関係者で知らない人はいない実力者です。岡口裁判官のこの素晴らしいアドバイスを、入管への配偶者ビザ申請に引き直してみると、次のように言い換えられます。
“申請書は、ファーストインプレッションなのですが、これがとても重要なのは、審査官がこのファーストインプレッションにしばらく拘束されるからです。だから、申請理由書はなるべく短く、すぐに読めるようにして、ベストエビデンスを挙げながら、「私が言っていることは間違いないのです。」と審査官に刷り込む。それをまずバンとやるのがすごく大事で。(筆者変更)”
配偶者ビザ申請のプロから見ると、この文章は、配偶者ビザ申請書類作成のポイントを的確に表現しています。
以下で細かく解説していきましょう。
岡口判事は「訴状は、ファーストインプレッションなのですが、これがとても重要」と言っていますが、配偶者ビザの申請においても「第一印象」がとても大切です。
判事は、「これがとても重要なのは、裁判官がこのファーストインプレッションにしばらく拘束されるから」と言っています。
これは入国管理局も同じです。審査官は最終的に配偶者ビザの許可・不許可を決定するわけですが、その際には人間なので、どうしても第一印象に引きずられるのです。
特に、入管では、最初に審査官が案件をざっと検討したうえで、「許可相当」「不許可相当」「注意案件」といった具合におおまかに振り分けることになっています。
最初に「不許可相当」に振り分けられてしまうと、そのまま不許可まっしぐらの可能性が高く、再浮上が難しいのです。
その意味でも、配偶者ビザの申請書は第一印象がとても大切なのだということを、覚えておいてください。
では、申請書の第一印象をよくするためには何をしたら良いのでしょうか? 岡口裁判官は訴状について、「なるべく短く、すぐに読めるようにして、」とアドバイスしています。
配偶者ビザの申請理由書も、簡にして要を得た内容にしましょう。岡口裁判官は、「大した内容じゃないのに分厚いという、もうそれだけでダメですね」とも言っています(前掲書31ページ)。
あまりに淡泊だと立証が尽くせないのでダメですが、冗長な書面は嫌われます。何事もバランスなのです。
配偶者ビザ申請の際に申請書に添付する書類は、申請内容を裏付ける「証拠」なのですが、申請理由書にはそのなかでも特にインパクトのあるベストエビデンスを記載しましょう。
もちろん配偶者ビザ申請の理由書には、過去の入管法違反の事実についてのエクスキューズなどを書かなければならないケースもありますが、通常は当該申請が配偶者ビザが許可されるにふさわしい案件なのだということを、最高の証拠(ベストエビデンス)を示しつつアピールすることになります。その上で、私の申請は許可相当で間違いないのですと入管の審査官に「刷り込む」ことができれば、出だしは上々と言えます。
配偶者ビザの必要書類を集めるとき、入管からデフォルトで要求されている(すべての人に共通の)書面について、証拠説明書をつける必要はないでしょう。
しかしながら、あなたの配偶者ビザ申請になにか弱点がある場合は、それに応じてサポーティングドキュメント(補強書面)を添付するはずです。
その、あなたの個別の事情に応じて提出する書面は、入管がデフォルトで予定している書面ではないのですから、その証拠の意味についてきちんと説明する必要があります。その書面が「証拠説明書」です。
岡口判事は裁判における証拠説明書の重要性を問われ、次のように回答しています。
“重要ですよ。立証趣旨を押さえた上で証拠を見たいですからね。(中略)証拠説明書に「立証趣旨はこうなので、ここを読んでください」と、それは書いてもらわないと。(前掲書35ページ)”
Ⅰ-1 在留資格認定証明書交付申請書
⇒海外からお相手の外国人を招へいする場合に作成します。
在留資格変更許可申請書
⇒すでに日本に滞在している外国人が配偶者ビザを取得する場合に作成します。
Ⅰ-2 申請理由書
⇒なぜ配偶者ビザの要件を満たしていると言えるのかを端的に主張し審査官の心証を形成するために作成します。
Ⅰ-3 質問書
⇒配偶者ビザの許否を決定するにあたり、入管が申請人に確認したい事項のリストです。
Ⅰ-4 身元保証書
⇒通常、申請人の日本人配偶者がなるものとされています。
Ⅰ-5 証拠概要書
⇒申請にあたり弱点を補強する証拠を提出する際に作成します。
Ⅱ-1 パスポート/在留カード
⇒短期滞在者以外の変更申請の際に入管に提示します。
Ⅱ-2 証明写真
⇒直近3カ月以内に撮影した無背景無帽、鮮明なものである必要があります。
Ⅱ-3 結婚証明書
⇒お相手の母国で発行されたもの。原則としてアポスティーユ等の認証により真正が担保されていることが必要です。
Ⅱ-4 収入を証する書面
⇒日本人側の収入だけでは暮らしていけない場合に特に重要です。
これから来日するのですから母国で職についていても意味はなく、原則としては日本での仕事である必要があります。
⇒最近はインターネットで国境を越えて仕事をしている方も多いですが、収入を公の書面で立証するハードルが高くなります。
Ⅱ-5 交際資料
⇒日本人の手元にあまり資料が無い場合には、お相手も頑張って収集に協力してください。
弊社のクライアントでは、写真がお相手のスマホに入っているというケースが多いようです。
Ⅲ-1 戸籍謄本
⇒婚姻の事実の記載を確認してください。
Ⅲ-2 住民票の写し
⇒世帯全員分、世帯が別でも同居人がいる場合は、同居人の分も。
Ⅲ-3 住民税の課税証明書
⇒市区市区町村役場で取得します。扶養人数などにも目配りを。
Ⅲ-4 住民税の納税証明書
⇒市区町村役場で取得します。扶養人数などにも目配りを。
Ⅲ-5 スナップ写真 / LINE履歴等の交際を証する書面
Ⅲ-6 預貯金の残高証明書
⇒収入に不安がある場合。少ないとヤブヘビになりますのでご注意。
⇒銀行ホームページのPC画面をスクリーンショットした画像は、数字を改ざんできるので「証明力」が弱いです。
Ⅲ-7 土地建物の不動産登記簿謄本
⇒直近のものを法務局で取得。購入時の登記簿謄本や権利証は、発行時点で所有権者であったことを証明できますが、
今現在も所有権者であることを証明できないのでご注意ください。
岡口判事は、前掲書において、弁護士の実力が判決に影響を及ぼすと思いますか?と問われ、次のように答えています。
“しようがないと思いますね。民事訴訟は相対的真実であって、記録にあることしか我々はわからないんです。いい代理人は証拠の出し方もうまいし、最初の訴状の段階から証拠だしまで、あらゆるプロセスにおいて代理人によって差がついちゃうので、それはいちいち是正できない。その最終結果としての判決なので、もうしようがないと思っていますね。”
これを次のように読み替えると、行政書士選びには慎重にならざるを得ないですよね?
“しようがないと思いますね。配偶者ビザの審査は相対的真実であって、記録にあることしか我々はわからないんです。いい行政書士は証拠の出し方もうまいし、最初の申請の段階から証拠だしまで
あらゆるプロセスにおいて代理人によって差がついちゃうので、それはいちいち是正できない。その最終結果としての許可・不許可なので、もうしようがないと思っていますね。”
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行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザ
特定技能ビザ申請